王国ファンタジア【宝玉の民】-外伝-




顔を上げ、ベリルの顔を覗き込む。
乾いた舌が喉に貼り付く。
上手く出せない声を無理矢理押し出し、聞いた。


「……いいのか…?」


小さく柔らかく、綺麗な顔が笑う。


「大切な仲間なのだろう?だったら私の持つべきものではない」


ベリルの浮かべていた笑みに、少し困った色が混じる。
肩を竦めて小首を傾げる。


「それがあると、マジックアイテムの使い勝手が良かったのだが」


その言葉に耳を疑う。

「えっ…?」

「アイテムに充てんされている魔法を上手く引き出してくれていた」


有り得ない、話である。
【宝玉の民】以外の者に、[民の雫]は扱えないのだから…。

有り得ないと分かりつつ、ドルメックは聞かずにはいられなかった。


「…核石の力を使ったりしてないだろうな?」

「いいや」


ベリルは首を振る。
金の髪がさらりと揺れた。

否定の言葉に胸を撫で下ろす。


(…何聞いてるんだ、俺。
【宝玉の民】以外扱える筈無いのに……)


それでも、もしかしたらと思わせる何かがベリルにはあったのだ。

その為、その後に続いた言葉に心拍数が跳ね上がるのを抑えられなかった。


「それは特別なものだと感じたのでね」