「…それは、楽しみだな…」


ドルメックもニッツーを見詰める。
絡めた腕を胸の谷間に挟み込み、更に摺り寄るニッツー。

こうやって人の肌に触れるのも、随分と久し振りだ。
テイシンには悪いが、この際楽しんでみてもいいかもしれない。

(そもそも、紹介するのが悪い)


そんなことを考えていると、ニッツーが話し掛けてきた。


「それじゃ、どうする?

このまま店に入ってもいいし、他の場所がいいなら移動しましょ?」


まだ少し、熱を帯びた身体を腕に感じつつ、ドルメックは視線を空に泳がせる。

「そうだな…。
じゃあ、取り敢えずどこかで一杯やらないか?」


「いいわよ。良い雰囲気の店教えてあげる。

…でも珍しいわね?
大抵の男は一も二も無く私を求めてくるわよ?」


多少、皮肉の籠った言葉が返ってきた。
彼女の自尊心を傷付けてしまったらしい。

フッと笑みを浮かべ、誤解を解くことに努めた。


「すまない。変な誤解を与えてしまったな。

貴女はとても魅力的だ。
本当だったら直ぐにでもその細い腰を引き寄せたい位…」

「だったら、なぜ…?」


上目遣いで問うニッツー。
その仕草も蠱惑的だ。
自制心が崩れそうなのを堪え、続ける。


「貴女は今一仕事終えたばかりだろ?
他の男の感覚が残ったまま、違う男に触れられるのは嫌だろうと思ったんだ…」


ニッツーは目を見開く。
そして艶っぽさとは無縁の、しかしとても魅力的な微笑みを浮かべた。


「アナタ、見た目だけじゃなくて中身も凄く良い男ね?」


二人は酒場へと歩き出した。