二人、夜の街を歩いて行く。

よく見ると、あちこちにドラゴン襲撃の爪痕が見て取れる。

そんな中でも逃げずに逞しく生活している者も居るのだ。
案外、そういう者達のほうが強いのかも知れない。


テイシンの後を歩きながらそんなことを考える。
細い路地を抜けると、目の前に娼館が現れた。

テイシンは迷わずそこに足を踏み入れる。
受け付けの若い男に、話し掛けていた。


「よ!久しぶり。
ニッツー呼んでくれよ」


受け付けは、ちょっと困った顔で答える。


「ニッツーはまだ客の相手してるよ」

「いいから、テイシンが来たって言えよ」


結局、受け付けの男はニッツーを呼びに奥の部屋に入っていった。

どうやらニッツーという女性とテイシンは仲がいいらしい。


暫くすると一人の女性が気だるそうに出てきた。


「よぅ、ニッツー!
今日も色っぽいなぁ〜」


テイシンが声を掛ける。

淡い栗色の、緩い巻き毛の女性が髪をかき上げ溜息混じりに呟く。

「客が居る時に呼び出さないでよ。
いつも言ってるじゃないの!

で、どうかしたの?あんたがアタシを褒めるなんてさ」


潤んだ瞳と上気して赤みを帯びた肌が、情事の後であることを雄弁に語る。
色っぽいというのは嘘では無いだろう。


「ニッツー好みの色男を紹介しに来たんだよ。
後ろにいるこいつ、同じ討伐メンバーの一人なんだ」


そう言ってドルメックを指す。