カウンター席に戻ると、ドルメックは酔い潰れて寝てしまっていた。

安らかな寝息を立てている。


「ダンナ〜、起きて下さいよ〜。
もうお開きにして帰りましょ〜?」


トールは耳元で呼び掛けた。
モゴモゴと何か応えたようだが、完璧に寝惚けている。

このまま起きなそうである。
困ってしまった。
ドルメックの支払いの筈なのに、肝心な本人の意識は無い。

勝手に財布を漁るわけにもいかず、頭を抱えるトール。


そんな中、マスターが声を掛けてきた。


「コイツはそうなっちまったらテコでも動かねぇよ!
後で上の部屋に投げ込んでおくから帰ってもいいぜ?

…それとも一緒に泊まんのかい?!」


最後のセリフの後に豪快に笑って、他のテーブルの片付けに戻っていった。


トールは多少ゲンナリしつつも、きちんと気遣いの出来るマスターに好感をもった。