ボトルに残った最後のワインを空けながら、ドルメックは話続ける。
「[民の雫]には、【宝玉の民】が日々蓄積し続けていた膨大な魔力のほぼ全てがそのまま納められている。
王宮魔術師のお墨付きもあるらしい。
なのになんで、魔石としての価値が評価されないと思う?」
トールには、ドルメックが何を意図して話しているのかさっぱり解らなかった。
首を横に振って答える。
「[民の雫]の魔力を引き出せるのは、今は亡き【宝玉の民】だけだからさ」
「っていうことは、つまり〜」
「[民の雫]の魔力を活かせる者は、この世界のどこにも存在しないっていうことだ」
グラスのワインを飲み干し、深い溜息を吐き出した。

