「ダンナ〜?どうしたんです〜?」
眠っているのではと、トールはドルメックの横顔を覗き込んだ。
「…滅びた種族の話なら、俺もネタあるぜ?」
ドルメックがボソリと言った。
トールに視線だけを向ける。
「[民の雫]って知ってるか…?」
トールは頷き、自分の持っている知識を引き出す。
「勿論、知ってますよ〜。
十数年前に滅びた【宝玉の民】の核石です〜。
希少価値の高い、ランクSSの超一級品と言われている宝石でしょ〜?」
「ああ、そうだ。
じゃあ、[民の雫]は魔石としての側面も持ち合わせているっていうのは、知ってるか?」
全くの初耳だった。首を横に振る。
宝石としてはかなり有名で、類い稀な美しさと称される[民の雫]。
それだけ有名な筈なのに、何故魔石であることが全く知られていないのだろうか。

