理科準備室には

未だナイフを柏倉に向けたまま動かない俺と

上沢に致命傷を負わされた柏倉が居た。


そこから少し離れた理科室に中島と

柏倉に右足を刺され、立っているのもやっとな上沢が、俺らのやりとりを黙って見ていた。

『……』


"生き残る為には殺せ"


このHRの真意を知ってしまったから、余計に体を動かせなかった。

『…ほら、早く』

自分を殺すよう促す柏倉。

俺は呼吸を乱しながらそんな奴を睨みつけた。

『……黙、れ…』

『何を迷う必要がある?殺すのなんて一瞬だ。
一瞬で私もお前も楽になる』

気がつくと柏倉の腹からは、おびただしいほどの血が流れていた。

『黙ってろってんだ…』

このままじゃ埒が明かない。

かといって俺に奴を殺る度胸なんてない。

やれるはずがない。

だってこんなイカれた奴だって

"人間"なのだから―…