『音?』



…ッ



…グチョッ



確かに、理科準備室からは微弱ではあるが、不気味な音が聞こえる。


『まさか…柏…』


上沢がポツリと言う。


『!!これアイツがやったってのか!??』


『だってそれ以外…』


上沢が柏…と言いかけた人物は、柏倉真生(かしわぐら さだお)だ。

俺達の理科担当の教師で、白衣と眼鏡が嫌という程似合い

独特の雰囲気を持っていて、評判はあまり良くない。

以前、実験中に生徒が一人、危険にさらされた事があったらしい。

詳しくは知らないが…


『だったらなおさら危険だろ!早く行こうぜ!!なぁ安藤?』


『………』


『?慶ちゃん??』


『おい、聞いてんのか?』


無言の俺に二人が呼び掛ける。

が、俺は返事もしないまま

俺のシャツを握りっぱなしだった上沢の手をどかし、ゆっくり立ち上がった。





…そして、静かに準備室へと歩みを進めた。