『ほら…お前らも安田の後に続けよ!!』


長曽根が息を切らしながらそう叫んだ。

それでも俺らは動かなかった。


『…だからそれじゃお前が…っ』


『いいか!??ここでモタモタして共倒れするより…おとりを使った方が効率がいいんだよ!!!』


『……っ』


確かにそれはそうだ。

長曽根の言ってる事な間違いはないと思うのだが…


『数学出来なくったって…これくらいわかんだよ…』



その時




ガンッ!!!


『ウダウダ何言ってんだお前らぁあぁ!!逃げられる訳ねぇだろうが!!!』


さっきからもがいていた斉木が顔を真っ赤にしてそう叫び、教卓を蹴り始めた。


『うっ…』


『!長曽『早くしろよ馬鹿!!』


『…っ!!!』


それでも助けに行こうとする俺に、隣りに居た野球少年の坊主頭・中島涼介が唇を噛み締めながら言った。


『安藤…行こう…』


『なっ…』


『こうなっちゃった以上…せっかく出来たチャンスを無駄にする方が…長曽根に失礼だろ』


わかってる…

わかってるよ…そんなの…



俺はグッと拳を握り締めた。

そして、苦汁の決断をした。


『…っ長曽根…!!あとでぜってぇ合流しろよ!!!』


『おう!!!』


長曽根はニッと笑う。


『アタ…アタシ達もあとで行くからぁ!!』


未だ動かない田嶋を抱え、震える声で金澤が言った。


『夏奈子ぉ…』


『…走れぇ!!!』


長曽根の声を皮切りに、俺らは一斉に飛び出した。

開け放されたドアだけでなく、男子は廊下側に設置された窓からも脱出を試みた。