「203?私202号室ですよ」
「そ、そうなんですか?全然知らなかったです」
「時々すれ違ったりしてるんだけどな…」
「えっ…」
「まー。そのときキミはいつもギター持ってたり音楽聞いてたりしてたけどね」
「な、なんかすいません。改めてよろしくお願いします。俺、瀬良崎真哉です」
「及川真綾です。よろしく」
「大学生…ですか?それとも、もう仕事に?」
「あー。どうなんだろ。とりあえず仕事はしてるかな。大学は行ってないの」
「俺もですよ。なんかやりたいことが見つからなくて…ただギターが好き。音楽が好きってだけで。端から見たらただだらけてるだけに見えるだろうし…」
「そうかな?だってギター上手だよ。さっき弾いてたのだって真哉くんが作った曲なんでしょ?私好きだよ」
僕は彼女の言葉にドキリとしたのを感じた。ただそれが曲を好きと言ってもらえたからなのか名前を呼ばれたからなのかは、分からないけれど――
