「この幸せな時間…止まっちゃわないかな。」
「…俺もそう思ってた。」
「でも、今あるこの時間を大切にしなきゃいけないよね。」
「…そうだね。…へっくしゅん!」

 今度は俺がくしゃみをしてしまった。友嘉は俺の顔をみてくすくすと笑うと立
ち上がり『入ろう』と言って俺に手を差し出してきた。
俺は友嘉の小さな手を握り立ち上がるとお互いしっかりと手を握って家に入り、
一夜を明かしたのだった。

 翌日、友嘉と俺が料理を作っていると慶嘉が目を擦りながら起きてきた。

「お早よう慶嘉。」
「お早ようパパ、ママ。…ねぇパパ。」
「ん?」
「ママの過去はどうだった?」

 慶嘉の鋭い発言を聞き、友嘉は手を止めて俺と慶嘉のところへ来て床に座っ
た。

「…許せないよ、あんな奴ら。許せるはずない。だけど俺には…」
「良いの、それで。」
「え?」
「それで良いんだよ。今更あの人達に言ったところで無駄続き…だったら何もし
ないでいるしか出来ないよ。それに私は…慶ちゃんに自分の手を汚してもらいた
くないの。」
「友嘉…」
「…大丈夫だよ、パパ。ママ。だってもう…死のメールは送信されちゃったんだ
もん。」
「…慶嘉…そうだったの…」
「…良いんじゃない?死のメールがどんなものかは知らないけど…いじめをやっ
ていた奴らへの罰としては最適だと思うから。それに、慶嘉だって許せないよ
な。ママを殺した奴等の事。」
「うん。」
「慶嘉…慶ちゃん…」

 友嘉は泣きながら俺と慶嘉を抱き締めた。
俺は更にそこから二人を自分の胸に抱き、暫らくの間俺たちは家族の大切さとい
うものを満喫していた。