狼と赤ずきん。





「おい!泣き虫!!」



荒月の声―。



私、泣いてなんかないよ。



呪文は荒月の声に反応してピタリと止んだ。


狼の魔法?



私は涙を堪えて、顔を上げた。



荒月はいつになく真剣な眼差しで私を見ている。



あの透き通った綺麗な目だ。




あんな目で見られるなんて・・・



私はドキッとした。




荒月は一呼吸おいて


私に片手を差し出した。






「ボール、貸せ!」



私は言われたとおりに荒月にボールを渡した。