それはまさに『地獄絵図』と呼ぶに相応しい光景だった。
 ボディの色がグレーに変色し、荒野に倒れる数多のPC(プレイヤーキャラクター)達。
 荒野には多くの魔物(モンスター)が生息しているが、これは奴等の仕業ではない。
 その場に倒れているPC達は皆この荒野に生息するモンスターよりもレベルが高い。つまりここは彼等にとって安全な狩り場だったのだ。だからこそ単純にゲームを楽しみたかった彼等は狩りにこの荒野を選んだ。
 けれど、何事にもイレギュラーはある。
 それが彼等のHP(ヒットポイント)を丸々奪い、戦闘不能状態にした張本人、PK(プレイヤーキラー)の存在だ。
 モンスターとは違い、PCを攻撃し、戦闘不能状態にしてもドロップアイテムどころか経験値さえももらえない設定になっている為、普通に考えればなんのメリットもない行為なのだが、数いるプレイヤーの中には相手をねじ伏せ、自分との力の差を見せることで快楽を得る者や、殺人衝動という名の欲求が抑えられない者達がいる。
 不運にもこの荒野に狩りに来ていたPC達はそういった連中に目を付けられ、現在のような状況になった……というわけだ。

「どうして……こんなひどいことを……」

 被害を受けたパーティーの最後方にいた左右異なる色の瞳を持つ少女は信じられないといった表情でその光景を見ていた。
 そして自分の前にいたPCも二人のPKの攻撃によってHPをすべて削られ、ボディの色を変色させて荒野に倒れる。
 その場に残されたのは異眼の少女と二人のPKのみ。

「どうして……だって? そんなの楽しいからに決まってんじゃん」

 PKの一人がそう言って笑い、右手に持った剣を振りかざす。
 それが異眼の少女に振り下ろされようとしたその時――一迅の風が吹いた。