座敷 幸福――――――――――



此の名が男―――ヤナセに浮かび上がったのは、今から数えて約一月前。


未だ、一月………

長いのか、短いのか。
それは個人によって変わるものであり、易々と決め付けられる事柄でない。


少なくとも、ヤナセ個人に限れば、人生の中でも最も此の一月程時が経つのが早かったものはなかった。

ただ漠然と早かった。



一月前の私は何をしていたのだろう、と、ヤナセは回想する。




絶望。

絶望していた。


此の後に起こる宿命に、縛り付けられていた。


自棄に埋もれ、彼女をひたすら傷付けていた。


……

「傷付けていた事に関しては今も………だな」