「オマエ」



初めは解らなかった。


「オマエ」とは、何かを。

考える余地は無かった。考える地点で、そこには空白しかなかった。


知識が無かった。

つまりは、無から有は創れない。それだけの事。




何も、無い。




「オマエヲステレバヨカッタ」

当時は見上げる程に大きかった「オマエ」を発する「モノ」は、日が変わる前には必ずそう発した。


「オマエ」をステル…


「オマエ」を棄てる…


「オマエ」を破棄する…





一度、発した事がある。


「『オマエ』って何――――」


その先は記憶が煩雑で、覚えが無い。