座敷 幸福―――――――



この世に生をうけた者で、この名前を知らない、というのは、余程の辺境地に生まれたか、彼が現れる前に死に至ったかのどちらかであろう。



今までに幾人もの異端児を産み出した、名家中の名家



座敷家




その座敷家次男にして、座敷家史上最高の「傑物」とうたわれた人物である。





彼は、天才だった。




天才――――


使うのは簡単だが、使い勝手がきかない厄介な言葉だ。



何をもってして天才なのか。

天才とは、どうあるべきなのか。


そんな途方もない疑問を、彼はたった一言で表した。