運命を起こさないようにゆっくりと動き、起き上がる。

携帯を見ると、22:00を越えたあたりだった。19:00にこの廃墟に入ったのだから、二時間近く眠っていた事になる。

連絡を取ろうにも圏外を示している。ため息をついて、桐は携帯をしまった。


「参ったわね…」

今頃、親は心配しているだろう。取材だからとはいえ、音沙汰無しというのは、まずい。


何か他に手段は無いのだろうかと部屋をぐるりと一周、見回して、二つ、和室もとい部屋にあるものとして違和感を感じる物があった。


監視カメラ――――


部屋の天井の隅に計、四つ。

桐を、否、運命を縛り付けるような、露骨な程の監視体制。監視カメラが在ると分かった瞬間、急に息苦しくなった。


そしてもう一つは、


障子の戸の横に付けられた、暗証番号を打ち込む機械――――