どれ程の時間が経ったのだろう。霞み歪んだ視界が、徐々に晴れてくる。

羽虫に似た音をたてる蛍光灯と、畳の原料であるい草の香ばしい香り。


桐の意識が段々と覚醒する。頭の鈍痛に顔をしかめつつ、まず真っ先に現状の把握をする。

「――ここは…?」

八畳程の和室。何も無い、和室。


「それと…」


右半身に重みを感じる。


運命が寄り添う、というより抱きしめる、といった感じで桐の隣で横になっていた。


規則正しく聴こえる小さな寝息が、何故か桐を安心させた。


同時に、顔が紅潮するのが自分でもわかった。同性とはいえ、多少は緊張するものだ。ましてや、運命程に麗美なら尚更である。