人間であった炭は、あるモノは踞り、あるモノは倒れ、あるモノは上半身を吹き飛ばされたのか、下半身のみが落ちている。


まるで、原爆ドームの中心にいる様な感覚。

生きているモノは幸福、ただ独りだった。




此れが、「黒船」に搭載された闇風の傑作兵器「天の光」の直撃を受けたモノの末路だ。


焦げた臭いは一切しない。鼻を利かせても、なんの臭いすら感じない。

幸福が異常な訳ではない。

異常なのは空気の方だ。

「天の光」の爆風は、微塵の臭いさえ残さず、完璧に吹き飛ばしたのだ。幸福が今、感じられるのは、幸福がくわえている煙草の微かな紫煙しかない。



静かに、幸福は煙草を吸い続けた。静かに、煙を吐く息すらも聞こえない程、静かに。


やがて一本を、吸い終わる。


とても長い時間の様に感じた。実際はさほど経ってはいないのだが。