どこの川原にもありそうな、楕円形の石。しかし何処か精巧で、人の手が加えられている。



とある町の隅にある墓地に、それはあった。

長方形に整えられた石の中にある、掌程の大きさのそれには、何処と無く、疎外感がまとわりついていた。


石…いわゆる、無縁仏というやつである。

どこぞの輩かも知れぬ骸に捧げる、最期の情け。

名前も無い。いつ何時、何処でどの様に、死んでいったかも分からない。


ただ、この世界に「在った」という、事実。

存在を繋ぐ、架け橋。




……………この様に言えば、少しは聞こえは良いように、なる。

しかし実際は、虚しいだけだ。



誰一人、線香や花を持ってくる者はいない。
雨や風に石は傷み削られ、みすぼらしくなった醜態を晒す。