倉崎 桐の視線は、目の前の和服の少女に隙無く奪われていた。


「あなた…誰?」


唯一動いた唇を必死に動かし、問う。

それが聞こえなかったのか、あえて聞かなかったのかは分からなかったが、少女は桐の言葉を無視するように何も言わず、桐に近付いてきた。


「………っ」


蛇に睨まれた蛙。今の桐を表すには一番妥当な表現だろう。

耐えられず、桐は目をつむった。



頬に何か、暖かいものが触れた。

暖かい、もの。
冷たく、ないもの。


それが、桐の恐怖を和らげた。