座敷幸福の睡眠は、常にノンレムか、気絶に近い意識の剥離だ。

身体を酷使し、ぼろ布の状態で眠るか、意図的に脳の活動を弱め、睡眠に似た状態を作るかの、どちらか。

決して横にならず、壁に寄りかかり、「眠る」。同じ場所ばかりいるため、そこだけが黒ずみ、畳が凹んでいる。




なのに何故か、布団がある。






幸福が今の居場所を得たのは、家を出てすぐの頃だった。

今から四年前。数えが十五の時。

陰鬱とした座敷古傷の住まいに、その空気に吐き気を催し、幸福は座敷家を出た。

結果としては、最良の判断だった。あの時出なければ、古傷の影響に因り脳まで腐った廃人と化していただろう。


この部屋は、「美少年」が勝手に作り上げた欠作だ。


場所の地図と鍵を幸福に渡し、彼は消失した。

戻って来た時には、既に廃人と化していた。