運命が十六をむかえた冬。


十六年、微塵も変わらなかった世界が、激変した。


空気が乾燥した、木枯しが吹き荒れた夜。


運命が居た「箱」から少し離れた場所で火事が起きた。火の手は風の波にのるように、瞬く間に広がり、町全体が火に包まれた。




運命の邸も、例外なく餌食となった。旧家で全てが木造の邸は、一部を残して全焼。



この火事で行方不明者、死者の計は約七万人。町一つが全滅する常識を逸する奇怪な出来事。


そして生き残ったのは奇跡的に焼けなかった場所に居た運命、ただ一人。


忌み子と罵る者は、皆、消えた。


動く事も、何かを語ろうともせず、運命は打ち捨てられた人形の如く、目をつむっていた。