ゴーストオブアイデンティティー



      **

何とか、間に合ったらしい。

幸福はコートに刺さった硝子の破片を払い落としながら、ドアの隅で震えている桐に視線を向ける。


「倉崎、桐」

反応はした。が、目の焦点は合っていない。虚ろで、幸福が見えているのかすら微妙だった。

荒療治だが、幸福は呆然とする桐の頬を少し強めに叩いた。


「ひっ…痛…い……」

痛みの刺激で、桐の目に、弱々しいながらも力が戻った。


「…聞こえているか、倉崎桐」


「……え?………座敷…………幸………福?え?どうして?」


桐は突然の事に混乱していた。
わからなくもないが。


「落ち着け、倉崎桐。聞きたい事がある」





「アイツは、何処だ?」

幸福は続け様にそういうつもりだった。


だった。

が―――――――