「あの子、未だあんな格好をしてるんだ。…………可哀想」

ヤヨの言葉に、ヤナセは意外そうな表情を浮かべた。


「…?ヤヨは闇風に会った事があるのか?」

「何言ってるんですか?まさか知らないって訳じゃないですよね?」

双眼鏡のメモリをずらしながら、ヤヨは自分の隣に巨大な何かを引っ張り上げた。

「……よく持ってきたな、こんなもの」

全長が2mはあろうかという、露骨なまでに凶悪な兵器。
銃身が三つに束ねられた、20世紀において圧倒的な存在感を誇った、兵器の中の金字塔。

――――ガットリング砲

その進化型であった。
しかも、スコープが付いている。つまり、狙撃用。

その更に横にドラム型の弾層三つ、計3000発分の弾が置かれていた。

市販は勿論されておらず、完全に特注品。

一分間に12000発を放つ、暴虐的な破壊力がメリットであり、一瞬で銃身が焼け焦げ、弾の消耗が激しすぎるのがデメリットの、課題山積みの兵器だ。

現在、戦闘機に配備されているバルカン砲が一分間に6000発であると言えば、その馬鹿馬鹿しい程の威力がお分かりいただけるであろうか。

それを…その猛獣を、ヤヨはたった一人で扱いこなそうとしている。