歩く。
運命の背丈より長い黒髪が、赤茶けた地面の色に汚れていく。


此所は、何処か。

桐は、何処か。

幸福は、何処か。


動くモノは、運命のみ。

足がざらつく。汚い。気付けば、地面がいつの間にか汚泥に変わっていた。

一歩、進む毎に汚泥の底が深くなり、跳ね返りの泥がまた、運命を汚していく。

和服が赤茶に染まっていく。
入水の如く、運命は汚泥にのまれていく。

しかし、歩む事は止めなかった。止まらなかった。

やがて泥が運命の全てを飲み込み。

世界は闇に満ちた。




「…………?」


再び目を開けると汚泥は無く、変わりに闇が広がっていた。

何も無いただただ暗闇。


そして知らぬ間に運命の背丈が縮んでいた。

動けなかった。

昔の、オマエだった。

運命という名を知らぬ、オマエだった。