何故か。

オマエ――――暗忌運命は、此所に居た。

狭苦しい、路地裏に、一つ。

運命は、はっきりとした記憶が無かった。うろ覚えの感覚で、ある部分の記憶が切り取られて放置された、曖昧さに埋もれている。

思い出せない………


桐が倒れて、運命はそれをただ見ていた。声をかけても動かず、しかし息はしていた。

倉崎桐はどうなったのだろう。

死んだのだろうか。
死んでいないのだろうか。

運命は桐が起き上がるのを待ち……

「…………」

それ以降の記憶が無い。


裸足に地の冷たさが直に感じられる。

寂れた、日の当たらない風景だ。空気が「ハコ」より澱んでいる。何とも言えない臭気が漂っていた。

赤錆にまみれた建物。
「モノ」の気配の無さ。


終わりに近い、光景だ。