少なくとも、七万人はこの町に住んでいたはずである。

それが全員、「火事で死亡する」
など、常識の範疇を大きく踏み外している。



満月の明かりで、建物の残骸がよく解る。


どこもかしこも黒ずみ、闇に溶けていく世界のようだ。



「わからない……」


桐は思わず呟く。

わからない。



町を崩壊させた方法が、ではない。


町を崩壊させた理由。

それがわからない。


やはり、異才の考える事は理解出来ない。自分自身を犠牲にしてまで、町を崩壊させた理由とは、何なのだろうか。



座敷 幸福――――



「あなた…何を考えているのかしらね…?」