倉崎 桐(くらさき きり)。

今年で十九になる、快活な少女である。



ジャーナリストの両親を持ち、その血を純粋に受け継いだ、ジャーナリストの卵。



文才にも恵まれ、大学では新聞部に所属。レポートや記事を書かせたら右に出る者はいない、と言われるほどの逸材。





その桐は、歩きながら戦慄していた。


夜道。


女子一人では危険、という意見が多数を占めるが、ここではそんな常識は通用しない。



人がいないのである。人どころか、生き物の気配すらしない。


「薄気味悪いわね……」



日本にこんな場所があったのか、あって良いのだろうか。

過去を振り返っても、こんな事例は無い。








ただの火事で、町の住人が全滅するなんて事は…あり得ない。


あってはならないのだ。