30秒ってどんぐらいだ………?
自分で30秒数えてもまだ一向にヒールの音は聞こえない。
もういっそ行ってしまおうか?
いや、それはまずいだろ……
そんなどうしようもない葛藤を心の中でしていると階段の方から白山の声が聞こえた。
「理事長!!!!自分の趣味に染めすぎですよ!!」
「いーじゃない。あら、それともあんなに可愛く仕上がった姿見たくなかったわけ……?」
「ぅ……ぃゃ……その…………可愛かったけど…………ってちげぇよっ!!」
そう白山の焦った声が聞こえたあと二人は姿を見せた。
「龍ヶ峰くん、さぁいってらっしゃい。」
はやる心を落ち着かせ、階段をのぼりきった瞬間うずくまり頭を抱えている白山の横を通り抜くとズボンの裾がぐっとひっぱられた。
めんどくさそうに振り返ると白山がボソッと俺に口を開いた。
「可愛すぎて襲うなよ、狼。」
言葉の意味がわからず頭をかしげてると背中を押されて、俺はとりあえず階段を一段一段おりていった。
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