「柚奈。もう、持って行くもんない?」 「うん。大丈夫。」 今日は、いよいよ家を出て行く日。 「それにしても、女のわりに荷物少なくないか?」 「ううん。十分だよ、お兄ちゃん。」 「そうかぁ?」 そうだよ、お兄ちゃん。 私の部屋にある物のほとんどに思い出がある。 たとえ、先生と関係なくても、それが思い出させるきっかけになると思うから。 私は決めたの。 前を見るって。 だから、ここにあった物と、思い出達と離れなきゃならないの。