俺は部屋にこもって悩んだ。

父さんは、将来医者になりたいと言った俺に学費が高い私立高校へ行かせてくれた。

こんなに応援してくれた父さんを裏切る…?

…俺にはそんなことできない。

医者になりたいということを告げたときの顔を思い出すと、俺はプロデュースのことは断らなければいけない気がした。

その時、ケータイが鳴った。
…拓也からメールだ。
「医者になるか歌手になるかで迷ってんだろ?
今は歌手になって一緒にがんばろうぜとは言えないけど、優がやりたいと思ってることをやればいいと思う。
どっちを選んだって親父さんは喜んでくれるよ。
やりたいことをやっている優の輝いてる姿を親父さんに見せてあげろよ」

昔考えていた疑問の答えが見つかったような気がした。

俺は歌いたい。
歌手になって父さんに医者になりたいと告げたときよりももっともっと笑顔にさせたい。

俺はすぐにプロデューサーに電話をかけた。

「俺、やります。
これからよろしくお願いします。」


なんとなくだが、心を縛っていたヒモがとれた気がした。