夢〜明日への奇跡〜(実話)

ー16年前ー (病室にて)

『なぁ今日じーちゃんえらいしゃべるなぁー!元気そうやしもう家に帰れるんじゃないの?』

私は笑いながら祖父に抱き着いた。

『れいちゃん体大きくなったな。重たくて、じーちゃん潰れちゃうぞ』

そう言いながら優しく髪を撫でてくれた。病状が悪化して死が目の前にきてる事を知っていた祖母や私の両親、親戚は皆 そんな私と祖父の姿を見てられなくて 私や祖父に気付かれないように涙をこらえるのが必死だったらしい。

『麗奈久しぶりにじーちゃんと寝る?』

祖父に抱き着いて離れない私を見て、お母さんが言った。

『えっ!いいの?泊まる!!泊まる!明日学校休んじゃって平気だよ。ずっとじーちゃんといたいもん』

調子者の私は どうして、お母さんが病院に泊まっていいと急に言ってきた意味も分からずに浮かれていた。
『馬鹿だね!学校は行きなさい。勉強しないと今の成績じゃ じーちゃんとの約束守れんぞ!英語赤点とってちゃいかんだろ!』

すかさず、お父んが私にそう言った。

『はいはい。勉強します。でも、お父さん何も成績の事を皆の前で言うことないじゃん!も〜むかつく』

私の言葉に暗闇の病室が一瞬だけ笑いで明るくなった。


ずっとこんなふうに じーちゃんを囲んで皆で笑い合えると思っていた。