夢〜明日への奇跡〜(実話)

『れいちゃん、わしはもう長く生きられないと思うんじゃ』


祖父はカーテンの隙間からクリスマスのネオンに飾られた街を眺めながらため息混じりに言った。

『どうしたの?じーちゃんもうすぐ退院できるってお母さんが言ってたし今日もこんなに元気じゃん!』


『れいちゃんといるから神様がわしに痛みを消して下さってるんじゃよ。ここ最近熱は下がらんし喉が痛くてたまらんのじゃ。病名を尋ねても婆さんも、お前のお母さんもわしに絶対言わない。婆さんが嘘ついている事ぐらいわしには分かる。最近やたらと昔の友達が見舞いにきやがるしな。な…んでわしが…すまないよ…』


祖父は癌であることに気付いていた。変わりゆく自分の体を認めたくなかったんだろう。確かに涙が枕に落ちていくのが分かった。


『そんなん嘘よ!絶対嘘!じーちゃんは死なないよ。私に介護福祉士になるまでには元気になるって約束したじゃん!どーしてそんな事言うのよ!じーちゃん弱虫だよ!死んだりしたら許さないからね!じーちゃんの馬鹿!!大嫌い!!』


私は祖父に背を向け何故か涙が止まらなかった。死ぬなんて考えたくもなかった。認めたくなかった。