ＭEMORIAL ADRESS

「また、遊びに来てね。沙羅ちゃん」



日向子は帰り際、もう一度沙羅に握手を迫った。

日向子の手を握り返している間、後ろにいた"彼"に目がいった。

口元に微笑を称えて、彼は沙羅を見ていた。



「私たちの住所…ここに書いてあるからね。いつでもおいで。皆待ってるからね」



日向子は紙切れを沙羅に手渡してﾏｲｸﾛﾊﾞｽに乗り込んでいった。



「沙羅…さんでいいのかな」



そうやって声をかけてきたのは"彼"だった。



「え…あ…うん。沙羅です」

「名字は??」

「加藤」



改めて見てみると、本当に背が高い。

そして太鼓をしているからか、ｶﾞﾀｲもいい。

声は、とても優しかった。



「俺、伊丹上総です。出身は埼玉。今16歳」



彼…いや上総はそう言って右手を差し出してきた。



「よろしく、沙羅ちゃん」



大きくて丸い目に射抜かれる気がした。



「よろしくね」



恥ずかしくてどうにもならない気持ちを必死に押し殺して、沙羅は上総の手を握り返した。



「絶対…絶対また会いましょう。俺、待ってます。沙羅ちゃんにまた会えるの。」