MEMORIAL ADRESS

「こんにちは-すっ」



舞台衣装から着替えて憩っていた他の団員たちは笑顔で挨拶してきた。

苦笑いで返事を返していると



「あなたも背中に何か背負ってるのね」



女の声でそう聞こえた。

奥から出てきたのは、初老の女性だった。



「首からね、見えてるよ。地獄太夫」



コーヒーの入ったマグカップをテーブルに置き、その女性は微笑んだ。



「あ…す…いません」



慌てて首筋に手を当てて、沙羅は赤面した。

今日は、今日の自分はおかしい。

刺青の事を言われると、いつも決まって激怒してしまうのに、なぜか申し訳ない気がした。

自分が今まで関わってきたどの極道者よりも、この初老の女性は貫禄がある。

ただならぬ強い空気に取り巻かれている。






『ぁたし、ビビってる』







「沖田日向子です。初めまして。あなたは???」



前まで歩み寄ってきて、日向子は手を差し伸べた。



「加藤沙羅です」



差し伸べられた手を握り返すと、日向子は微笑んで椅子に座るように促した。

何よりも驚いたのは、日向子の手はとても暖かくて涙を誘った事。