MEMORIAL ADRESS

公演が終わった後、両腕が痛かった。

理由は分からないけど、昇り竜が嘶き続けていた。

周りの観客たちが一人一人、満足そうに微笑んで帰っていく。

沙羅に呆然と立ち尽くす時間は無かった。

初めて感じた強い強い衝動に、侵されていた。

太鼓を打っていた人達の控え室の前に立つ。

この扉を開ければ彼に会える。

名前だけ、名前だけでも聞かなきゃ…

ドアノブに手をかけた時、肩を叩かれて振り返る。







運良く、彼は立っていた。






「一番前にいましたね」



にこりと笑って、彼は言った。



「あっ、うん、はい…その、良かった…です」

「ありがとう」



しどろもどろしながら答える。

それにも笑顔で返した。



「良かったら、中入ってください。他の団員がね、あなたの事見て"可愛い子"って騒いでましたしね」



彼はそう言って、沙羅を無理矢理中へ押し込んだ。



「こ…こんにちは…お疲れ様…でした…」



男だらけの空間なんて慣れたものなのに、沙羅は完璧にぶっ飛んでいた。