「この花……枯れてるけれど、ついでに捨てておく?」


枯れたかすみ草を触るレイコさん。


もう生を終えたそれは、少し力を加えられて触られただけで力なく落ちた。



かすみ草……何故か毎回本城さんはそれのみ買って来てくれる。


レイコさんが持ってきてくれる花束の中にもあるけれど、それはメインの花に添えられる程度で。


普通そうだと思うけれど、本城さんはかすみ草のみ。



不思議に思って聞いたら、自分が好きだと。


てっきり昔俺が好きだったの?って思ったけど。



あげる人の好きな花ではなくて、自分の好きな花を大量に買ってくる姿に笑ってしまった。


普通俺の好きそうな花を買ってきてくれるだろ?って。


そう言えば『何が良い?』と少し拗ねたように聞かれて。



好きな花……の話題で俺はひまわりが好きだって思った。


花の名前、で一番に思い浮かんだんだ。


それを本城さんに言うと、懐かしそうに笑いながら

昔の俺もひまわりが好きだったと教えてくれた。



初めて教えてくれる昔の俺、の事。


話ながら、その時俺に向けてくれた笑顔は、いつものどこか切ない笑顔じゃなくて嬉しそうな笑顔だった。