コンコン……



ドアが良い音を鳴らし、俺はその音に反応してパソコンからドアの方へと顔を上げる。



「はい」


ドアがレールの上をゆっくりと滑る音がして、ドアの向こうに立っていた人物が姿を現す。


……分かっているのに。


本城さんは、こんな時間からここに来たりしないと。


それなのに、今日来てくれるって分かってるから相手が本城さんじゃないか……と期待してしまう。

今日だけじゃなくて、毎日、毎回期待してる……か。


「……どう?具合は」


「全然元気ですよ」


「体は?」


「痣がまだ残ってますけど、問題ないです」


「良かった」



ホッとした表情を見せて、手に持っている花を俺に差し出すのは、レイコさん。


薄いブルーでラッピングされている、花束。


「ありがとうございます」


カラフルな花。


少し派手な気もするけど、明るくて生き生きしているのを見ればこっちも元気になれそうな気はする。



「前の花はもう枯れてるから、新しい花買って来たの。
入れ替えて来るわね」


そう言うレイコさんにまた花を返せば、レイコさんは花瓶を手に取ろうとして手を添えたまま隣の花瓶に目を向けた。