パタン……



最後に見えたのは、笑顔。



一瞬だけ、無理矢理作ったような笑顔を俺に向けてゆっくりとドアが閉まった。




その瞬間、さっきまであった暖かい空気が一気に消えてしまった気がする。




おかしいな。きっと気のせいなはずなのに。




まだ、俺は視線をドアへと向けたまま。



もう一度、
戻って来ないだろうか?



そんな、可能性の低い期待を抱きながら待ってみる。




だけど彼女……本城さんが戻ってくる気配はない。





と言うか、戻ってくる理由が無い……か。



さっきまで座っていた場所を見てもいたと言う跡は何一つ残って無い。



忘れ物でもしてくれれば、また必ず会えるのに。




また会いに来てくれる、その確証が欲しいんだ。





―――――――――




『おいっ!涙、気が付いたか!?』




何が起こったのか分からなかった。



死ぬ、ってこんな風なのかな、と思った。



あるのは真っ暗な闇。



次に何かを考える前に反射的に目を開ければ眩しい光。



そしていきなり視界に知らない男が入ってきて大声を出してきて。


眩しかったと思っていた光は太陽ではなく、人工的な光だった。