そんな事言われたら……。



彼氏さんにも、深歩ちゃんにも悪いじゃない。



「……分かったわ。今日はもう帰ることにする」



今日はもう家でゆっくり休もう。



「本当ですか?私と別れた後に会社に戻るなんて事は無しですよ?」



「そんな事しないわよ。安心して」




パソコンの電源を落として、椅子から立ち上がり伸びをする。




「それじゃ、帰りましょうか」


「うん」




深歩ちゃんと一緒にエレベーターに乗り込んで、会社を後にする。



「それでは、気を付けて帰ってくださいね」


「深歩ちゃんも、楽しんでね」




そう言うと、深歩ちゃんはニッコリ笑って頭を下げて、小走りに歩いていく。




もう、待たしてしまっているのかもしれない。




私を心配してくれて……




ありがとうと彼女の背中に言う。



彼女は、敢えて私と涙の事に触れなかった。




きっと気付いていたはずなのに。