そう心に決めた事が本当になったのは、涙が退院する1週間前だった。



「俺、レイコさんと付き合ってたのかな?」



ふと涙が言った言葉に、動揺して持っていた花瓶を強く掴む。




無防備な顔で私に言ってくる涙。



「ね、どう思う?
本城さんは昔の俺知ってるんだろ?誰と付き合ってた……とか」



「自分で思い出さなきゃ……」


「思い出せないから聞いてるんだけど」




……レイコさんのあの私に言ってきた時の笑顔が頭に浮かぶ。




「じゃあさ……」


コトッと僅かに音を立てて花瓶を置くと、椅子に座って涙の顔を真正面から見る。





「もし、今城戸くんが思っている事と昔が違う時、城戸くんはどうするの?」



私が恋人だったなんて思ってないのに、そうだって言ったら。




今の涙、あなたはどうする?




「事故に遭う前の恋人を取るの?それともレイコさんを取るの?」


「ちょっと待って!別にレイコさんが好きとか誰も言ってないだろ?

毎日来てくれるからそうなのかなって思っただけで……。
取るとかそんなのじゃない」




毎日涙の事を見に来るのはあなたをこんなことにしてしまったからだよ。





そして、涙の事が好きだから。