「私の不注意で城戸くんがこんなことになってしまって……ごめんなさい。でも……私にとっては、ラッキーなの」
私は飲んでいた紅茶のカップを置いて、レイコさんを見る。
なんて……?
謝罪されたのに、最後の方の言った意味が分からないんだけど……。
ラッキーって?
「城戸くんはあなたの事を忘れてる。あなたも婚約の事は彼に言ってないんでしょ?
なら、私が告白したら彼と付き合えるかもしれないのよね?」
何、この言い方。
黙って聞いていて苛々してくる。
誰のせいでこんなことになったと思っているの?
「私、彼の事が好きなの。
だから……彼に私を見てほしい。
私、本気でいくから。それを伝えようと思って。それじゃ」
「はっ?ちょっと…っ!」
言いたいだけ言って、伝票を持って出ていったレイコさん。
後に残された私は、ただ今さっきまで座っていたレイコさんの席を見つめる。
本気で……?
それでも……私は、彼を信じてるから。
涙は、しっかり思い出してくれるって。