「私も彼と同じ企画を担当する事になってまともに話すようになったんだけど、すごく落ち着いていて。

私の考えている事が分かっているかのように先に先に動いて助けてくれるの。

いつの間にか彼と仕事だけじゃなくプライベートの方でも一緒にいたいと思うようになっていたわ」


スプーンを使って紅茶を混ぜながら、レイコさんの話を聞く。




雅臣さんの言ったとおり、レイコさんは涙の事が好きなんだ。




「……だけどね、彼がある日指輪を付けてきたの。その時、初めて彼女の存在を知ったわ」




きっと……涙からプロポーズされた次の日の事だろう。



自分で買った癖に嬉しそうに私と同じ指輪を眺めながら、『自慢する!』なんて言ってたもんね。




「彼女いるの?って私が聞いたら『えぇ。やっとプロポーズしたんです。来年の春に結婚するんですよ!』ってすごく嬉しそうに言っていたわ」



涙……。


「幸せそうな城戸くん見てたら、私は何も言えなくてね……。
で、今回こういう事になってしまって」


涙が、私を忘れてしまった。