明らかに、邪魔のような気がする。
レイコさんと涙は、仕事の話をしているし……。
しばらく二人の会話を黙って聞いていて、やっと途切れた時。
「あのっ!私もう帰ります」
そう言って、バックとジャケットを手に取る。
「明日……来れる?」
「仕事帰りに来るね」
「気を付けて」
二人に頭を下げると、私は部屋から出た。
今の私には、涙が帰り際に行ってくれる「明日もこれる?」で満足なんだ。
明日も来ても良い、そう言われるだけで良い。
明日も、涙に会えることが保障されるから。
また、頑張れる。
「余裕ね?私と城戸くんを部屋に残して帰れるなんて」
エレベーターを待っていると、私の横へ立った人物。
フワッと甘くて少しキツい香水の香り。
顔を見なくても、誰か分かるから、敢えて見ない。
「もう帰るんですか?」
「えぇ。彼に仕事を渡しに来ただけだもの」
彼の顔を見に来たってのもあるけれど―――そう付け加えたレイコさん。
ちょうど来たエレベーターへと乗り込む。
「今から、時間あるかしら?」