「んっ……」




カチカチ……とボタンを押す音が部屋に響いていて、私は閉じていた目を開けた。




温かい。



「おはよ。起きた?」




そのままの体勢で目だけを声がする方へと動かすと、パソコンを操作している涙と目が合った。





「……ごめん、寝ちゃってた」




「仕事、忙しいんじゃない?寝てないとか」




まだ寝てても良いよ、そう微笑んで行ってくれる涙。



涙が傍に居てくれるってだけで、安心して眠れる。





「城戸くんは……仕事?」


「そ。簡単なヤツ。退院したら仕事に戻らないといけないし。
しばらく触ってなかったから、鈍ってるんだ」





そう言うと画面へと目を向けた涙に、私も起き上がってパソコンを覗き込む。




……が、パソコンの画面を見てつい笑ってしまった。




「仕事じゃなくて、ソリティアやってたのね?」





画面には、細かい数字とか、グラフとか資料が映ってるって思ってたのに。




やりかけのトランプ。




仕事じゃなくて、ゲームしてたんじゃない。




「ちょっと休憩で。本城さんが起きるちょっと前までは真面目にしてたから」




ムキになる涙に、また笑ってしまう。