私に話し掛けてきたのは、日曜なのにピシッとしたスーツに身を包んだ女性。


私達よりも年上だろう。



まさに大人の女性、と言った感じで眉を歪めながら私の方を見ていた。



「違う。俺の知り合いです。本城さん、俺の会社の上司のレイコさん」




涙に紹介されて、「本城です」と言いながら少し頭を下げると、向こうも黙って頭を下げた。





「城戸くんの上司で同じ企画を担当していたの」




涙の紹介を補足するように説明してくれたレイコさん。




会社……?




上司……?





「じゃあ……あなたが……?」





そこまで言って、グッと、口を閉じる。



ここは、涙の前だ。




だけど、それだけで私が言いたかった事を理解したらしいレイコさんは、私に見下すような視線を向けた後、クスっと笑って「ごめんなさいね?」と言った。




「私、ちょっと城戸くんの様子を見に来ただけだから。

企画の引き継ぎはもう他の人が引き受けてるし、城戸くんは仕事の内容もある程度覚えていたから、私が渡した資料のまとめをお願いね?また取りに来るから」



「あ、はい。任せて下さい」



「よろしくね?」





さっき私に見せた表情と変わってニッコリと涙に微笑みかけたレイコさんは、その後私達の方へ軽く頭を下げると、出ていった。