「じゃあ、帰るね?」



かすみ草を生けた花瓶を棚へ置くと、ベットに上半身を起こしてこっちを見ていた涙に言う。



「……今度はいつ来る?」


「最近、良く聞くよね?
来る日知っとかないといけない事でもあるの?」




涙を見ながらクスクス笑うと、涙は真顔で私を見つめ返すから笑いを止める。


「違う。明日は?休み?日曜だけど」


「うん。休みだけど……」


「じゃあ、明日来て」




涙からの、お願い。



来て……そのたった一言に胸の奥が暖かくなる。




「来て……いいの?」


迷惑じゃないの?


迷惑だ、って思ったりしない?




戸惑いながら聞いた私に、涙はニッコリ笑顔を向けて頷いてくれる。



「待ってる。夕方に来てすぐ帰るってのは無しだから。出来れば午前中から来て欲しい」



「……分かった。じゃあ、明日は早めに来るわね?」


「ん。気を付けて帰って」




ドアを閉める時、最後に見た涙は笑顔で私に手を振ってくれていた。



いつもこのドアを閉める時、またしばらく会えない……そんな寂しさを隠して笑顔で閉めていた。


でも、今日は心の底から笑ってドアを閉めることが出来た。


また、明日も涙と合うことが出来る。



その、喜びで。