慌てて拾おうと手を伸ばした時


目の前にスッとしゃがみ込んだ子が、視界に入ってくる。



「もう……先輩またボーッとしてましたよ?
大丈夫ですか?」



目の前の資料を拾って「バラバラにならなくて良かったですね」と私に差し出してくれる。



「……ありがとう。深歩(ミホ)ちゃん」



差し出された資料を受け取り机に置き直した所で、深歩ちゃんがあたしのパソコンを見つめながら口を開いた。



「先輩、まだ帰らないんですか?皆、定時で帰っちゃったのに……」



腕時計を見て時間を確かめると、18時。



もうこんな時間?



あたしは、どれだけボーッとしてたんだろ……。



「資料まとまったし、帰ろうと思って声をかけたら先輩何も反応してくれなくて……」


「ごめんね。もう少し資料のチェックをしてから帰るから」