Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―






「あぁ。波音が返してきたあのリングのお陰でね」




全部、思い出したよ。



波音を安心させるように笑い、今にも零れ落ちそうな涙を拭く。




「本当に……?」


「本当に」


「レイコさんは?」




まだ信じられないようで、波音の口からレイコさんの名前が出てきて……




やっぱり。



波音は表情に見せなかったけれど、ずっと……気にしてたんだ。




ごめんな。




「……思い出したから。俺が愛してる人。一生守りたいって人を」



恥ずかしいけど。




波音の左手を持ち、ポケットから出した指輪をはめる。




もう外されないようにしないとな。




「これ、返さないで。ずっと付けてて?……って言っても春にはこれから結婚指輪に変わるけど」




絶対に。




「もう、忘れないから。寂しい思い、させてごめんな?」



薬指に再び戻った指輪。




それを見つめて波音はまた涙を流す。




「すっごく寂しかった。涙が家に居なくて……私の事忘れちゃって」




「もう絶対忘れないから」




間に合って良かった。




約束を完全に果たす事は出来なかったけれど、こうして一緒にイルミネーションを見れて。